宅建の民法には意思表示があり、覚え方にコツがあります。
意思表示には、心裡留保、虚偽表示、錯誤、詐欺、脅迫があります。
この5つの第三者は、比較して覚えると知識の整理ができ、混乱を避けることができます。
特に「さ」で始まる意思表示の第三者は、善意であるだけでなく無過失であることも必要です。
「善意」とは「そのことを知らない」ということです。
「悪意」は「そのことを知っている」ということです。
「無効」とは最初からその効力が発生していないことです。
「取り消しできる」とは一旦効力が発生するが、取り消しできるということです。
最初から効力が発生するかどうかが「無効」と「取り消しできる」の違いです。
心裡留保というのは、その気がないのに意思表示することです。
例えば、車を売る気がないのに「100万円で売るよ」って言うことです。
つまり、冗談です。
心裡留保の相手方が善意無過失だと、その意思表示は有効になります。
先ほどの例でいえば、車を100万円で売るよ!って善意無過失の相手に伝えたら、それはもう無効を主張できません。有効になります。
さらに相手方が善意無過失でなくても、その相手方が善意の第三者に売却すると、無効を主張できません。
心裡留保の場合、第三者が過失があっても善意でさえあれば勝ちます(第三者の勝ち)。
相手方 善意無過失だと有効(無効を主張できない)
善意有過失だと無効(重大な過失がなくても無効)
悪意は当然無効
第三者 善意でさえあれば有効(無効を主張できない)
※ひっかけ問題対策
「知らなかったが重大な過失がない場合」は善意無過失ではありません。
善意有過失ですので気を付けましょう。
虚偽表示というのは、読んで字のごとく嘘の意思表示・嘘の契約です。
例えば、相手方と通謀して、土地の差し押さえを免れるために、相手方に名義を移す事などが挙げられます。
虚偽表示は相手方に対しては無効なのですが、その相手方が善意の第三者に売った場合、無効を主張できません。
虚偽表示の場合も、第三者が過失があっても善意でさえあれば勝ちます(第三者の勝ち)。
相手方 無効
第三者 善意でさえあれば有効(無効を主張できない)
悪意は当然無効
錯誤は、誤った意思表示をすることです(つまり勘違い)。
そして錯誤の意思表示は本人にしか取り消すことができません。
さらに本人に重大な過失があった場合、相手方が同じ勘違いをしていないと取り消しできません。
錯誤の相手方に悪意もしくは重大な過失がある場合、取り消しできます。
錯誤の相手方が善意で重大な過失がない場合は、取り消しできません。
例えば、表意者が100万円の壺を間違えて10万円で売ると言ったとします。
相手方が善意で重大な過失がなければ、表意者はその意思を取り消すことができません。
さらに、錯誤の相手方が悪意もしくは重大な過失があるにも関わらず、善意無過失の第三者にその壺を売ると、その善意無過失の第三者に対して対抗できません。
取り消しの意思表示をしても善意無過失の第三者が勝ちます。
第三者が善意有過失であれば、取り消して壺を取り戻すことが可能です。
錯誤の第三者は善意無過失でないと取り消しに勝てません(対抗できないと言う)。
相手方 善意かつ重大な過失がない場合は取り消しできない
悪意もしくは重大な過失がある場合取り消しできる
第三者 善意無過失の場合、取り消しできない(第三者の勝ち)
悪意または善意有過失の場合は表意者に対抗できない(表意者の勝ち)
詐欺とは人を騙すことです。
詐欺の被害に遭った人は取り消すことが可能です。
例えば、AさんがBさんに騙されて安くBさんに土地を売ったとします。
この場合、Aさんは騙されたのですから取り消しが可能です。
しかしAさんが取り消す前にBさんが第三者に土地を売った場合、その第三者が善意無過失だと第三者に対抗できません。
また、Aさんが取り消した後、その登記がまだの間にBさんが第三者に売却すると、第三者に対抗できなくなります。
例えば、Bさんの詐欺により、AさんがCさんに安く土地を売ったとします。
(こういうケースは第三者詐欺と言われます)
この場合、Cさんが善意無過失だとAさんは取り消しできません。
Cさんが悪意もしくは善意有過失だとAさんは取り消しできます。
相手方 取り消しできる
第三者 善意無過失の場合、取り消しできない(第三者の勝ち)
悪意または善意有過失の場合は表意者に対抗できない(表意者の勝ち)
強迫とは人を脅して何かをさせることです。
例えば、AさんがBさんに脅されて土地を安く売ったとします。
AさんはBさんに対して取り消しできます。
しかも強迫されているうちは時効が進行しません。
脅しが止んで取り消しできるようになってから時効が進行します。
横道にそれましたが、さらにBさんが善意無過失の第三者に土地を売ったとしても強迫されたAさんは取り消しできます。
相手方 取り消しできる
第三者 善意無過失でも取り消しできる
この通り、錯誤と詐欺の第三者は、善意無過失でないと表意者(本人)に対抗できません。
その一方で、心裡留保と虚偽表示の第三者は善意でさえあれば、表意者(本人)に対抗できます。
「さ」で始まる第三者(錯誤・詐欺)は、善意無過失であることが必要と覚えておきましょう。